【王子 小2 7歳】
「みんなと、一緒が良い。」
あの頃、1年生夏の王子は、そう言っていました。
幼稚園児の王子は、みんなができる、普通のことが、苦手でした。
挨拶されても、話しかけられても、うつむいてしまう。
王子から、話しかけられない。
人間が沢山いると遊べず、少し離れたところから、見てる。
そして、突然、時間や数字を、言ったりしていました。
子供達からすると、つきあいづらい子だったと思います。
「そういうのを、なおしたほうがいい。」
これは、みんなの、親切心だったのかもしれません。
でも、なおせないんです。
当時の王子は、本当は、
みんなに、挨拶がしたかった。
話しかけられたら、話したいこともあった。
王子から、誘いたかった。
みんなの輪の中に、入りたかった。
でも、王子が、そう思っていても、体が、そう動いてはくれませんでした。
1年生の夏、ママリは、その子供達とママ達に、「チャタがいることで、みんなが、嫌な気持ちになっていたことに気がつかなくて、ごめんなさい。」と謝り、王子の悪かった部分は、王子が、謝りました。
「でも、なおせないことが多いから、もし、みんなが嫌なら、無理に、チャタと遊ばなくてもいいよ。」と、話しました。
そして、「チャタが、数字が好きなことは、良いことだから、それを、なおさせるつもりはない。」と、伝えたところ、
『数字好きなんて、短所だよ。』
と、言われました。
この後、王子は、この子供達とは、あまり、遊んでいません。
同じグループでも、何人かは、王子のことを好きでいてくれたので、その子達とは、一緒にいることもあります。
悩みました。
ママリは、悩みました。
でも、ママリが悩んでも、仕方がないんですね。
決めるのは、王子でなければいけません。
少し落ち着いた頃に、ママリは、王子に、聞きました。
「このままだと、あの子達と、もう、遊べなくなっちゃうかもしれない。」
「一回、行ってみて、様子見てみる?」
ママリの言葉に、王子の体が強ばり、震えだしました。
「行けない。」
「こわい。」
王子の体には、ナイフが、沢山、刺さっていました。
それを見て、ママリは、決めました。
ここまでのママリは、なるべく、「王子が、他の子供達と、一緒に過ごせるように、工夫をしよう。」と、考えていました。
ここからは、
「王子は、王子家で、育てなければ。」
と、考えるようになりました。
学校や習い事では、王子は、他の子共達と遊べていたので、特に問題はありませんでした。
王子の外遊びは、パパ虫の担当になって、土日は、主にパパ虫と、でかけるようになりました。
子供達は、悪い子達ではありません。
ママリも、一緒に遊んできたので、見てきました。
あの一件も、子供達は、当然、ママリが、王子に、数字好きをなおすように、注意すると思っていたようです。
「なおす必要がない。」と聞いて、びっくりしていました。
この子供達の本音は、ママリには、分かりません。
でも、この子供達とママ達の言葉が、王子にとって、クリティカルヒットになってしまったことは、確かです。
そして、王子は、決めました。
「数字好きは、なおすか、隠す。」
「算数は、目立たず、間違えず、そこそこ、できてればいい。」
何かがあった時、
自分を守るために、自分を曲げずに、学校に行かなくなる子。
自分を守るために、自分を曲げて、みんなに合わせる子。
全く違う結果なのですが、同じような危機的状況にいると、言われました。
「みんなと、一緒が良い。」
王子は、自分を曲げる、もしくは、隠すことで、みんなに合わせることを、選びました。
ママリは、考えました。
「話せない、一緒にうまく遊べない。」
これらは、王子の、発達障害的な要素です。
「数字が好き。」
これは、おそらく、高IQ的な要素です。
この両方ともが、王子に、攻撃してきたんですね。
王子の長所が、その時は、短所に、なってしまっていた。
だから、
『数字好きを、王子の、絶対的な長所にしないと。』
ママリは、そう決心しました。
こうして、ママリは、王子の数字好きが、絶対的に長所だと言われるであろう塾を、探しはじめたのです。
最近は、小学校が合わなければ、インターネットの学校もあります。
通信教育もあるし、ギフテッド向けの学校も、あります。
そういうところは、多動でも、問題ありません。
でも、王子は、もともと、一人で黙々と、何かをしているタイプで、王子から話しかけたり、集団に入っていくことが、苦手でした。
それを考えると、もし、王子が、インターネットの授業だけを受けるようになったら、社交力が、どんどん低下して、王子ワールドに、閉じこもってしまうのではないかと、ママリは、考えました。
だから、まずは、他の子共がいる場所を探して、無理そうなら、また考えようと、ママリは、思いました。
王子家の場合は、それが、塾でした。
そして、この間の問題に、戻ります。
『多動の王子は、塾に、通っても、いいですか?』
ママリは、見学したいと思った塾に、王子が、注意欠如・多動症で椅子に座っていられないこと、自閉スペクトラム症で、質問に答える、音読等ができないかもしれないことについて、問い合わせました。
「立って歩き回るのは困るけど、1年生なら、多少体が動いたり、フラフラしてる子はいるので、大丈夫だと思います。質問に答えたり、音読ができなくても、大丈夫です。ただ、断る可能性もあります。」
と、ほとんどの塾で言われました。
断られた塾は、ありませんでした。
実際、1年の夏に、Wの夏期講習に参加してみたところ、なんと、王子は、そこそこ、座れていました。
「大丈夫かも!」
と、パパ虫と、大喜びしました。
でも、王子が、塾方式のWを選ぶのなら、同じ、塾方式のサピックスも、一度体験してから、最後の決断をしてほしいと、ママリは、考えました。
サピックスは、難しいけど、面白い問題を扱うと、有名な塾です。
サピックスに、問い合わせたところ、「断る可能性もありますが、チャレンジしてみてください。」と、言われたので、チャレンジしてみることにしました。
ママリは、考えました。
Wでは、かなり、座れていたけど、ちゃんと、座れていたわけではなかったんですね。
王子は、フラフラ揺れたり、キョロキョロしたり、していました。
ただ、クラス全体が、ガチャガチャしていたので、あまり、目立ちませんでした。
サピックスは、どうだろう?
サピックスに通うような子供達は、当然、座れているのでは、と、思いました。
王子に情熱があるように、他の子共達にも、情熱があります。
その子供達にとっても、サピックスは、大事な場所で、戦う場所なのに、王子の情熱だけを優先して、その子供達に迷惑をかけることはできません。
この時、1年の夏。
そして、サピックスの入塾テストは、秋で、入塾は、次の年の2月が最速だと、言われました。
まだ、時間があったんですね。
そこで、ママリは、『クスリ』を試すことを、決心しました。